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編集後記

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学会誌

日本消化器外科学会雑誌編集後記

 猛暑に続く9月の高温のため,紅葉前線の南下が平年より遅れていたようですが,最近めっきり気温が下がり,平地でも木々の色づきが目立つ頃となりました.私事ですが伊勢市での所用の翌日(文化の日),趣味のチョウの観察のため,南伊勢町の沿岸部まで足を延ばしてきました.雲ひとつない晴天のなか,お目当てのサツマシジミとヤクシマルリシジミに逢うことができ,日頃のストレスを一気に解消する貴重な時間を過ごすことができました.温暖な伊勢志摩地方とはいえ,残り少ない秋の空を惜しむかのように,各種中型トンボの飛翔も楽しむことができました.

 トンボを捕まえるために子供の頃,人差し指をくるくる回した経験をお持ちの方はとても多いと思います.それとも補虫網でバッサリでしたか?トンボのメガネは水色眼鏡...トンボの眼についてご存じでしょうか?

 トンボの眼には複眼と単眼があります.複眼はレンズ構造を有する6角形の個眼の集合体(1万~2万個)からなり,各々の個眼は数個の視神経を通して脳に連絡しています.単一の個眼では図形を識別することはできませんが,球形に配列した複眼を構成することで,高い図形認識能力を備えています.また,頭部に3個の背単眼があります.単眼は光の感知のみに使われるためピント調節機能が備わっていませんが,複眼よりも視覚情報が瞬時に脳にまで伝達するという特徴があります.トンボの優れた飛行能力や餌の捕獲,敵からの避難行動は単眼と複眼の性質を上手く利用して調整されているわけです.

 今月号は症例報告8編,臨床経験1編からなっています.いずれも十分な考察がなされ,読み応えのある内容です.編集委員会では,各々の委員が複眼的視点で(もちろん単眼的視点をふまえて)真剣に行った査読結果について,委員全員で修正点を議論し,採否を決定しています.時には大変熱い議論がなされます.

 私が症例報告の投稿者に考察を記載するうえで特に気をつけてほしいことがあります.第一に,自ら学習したことを羅列することを避け,できるだけ論点を絞ってほしいと思います(総説を依頼されているわけではないのですから).第二に,症例報告の意義について,原稿を作成する前に十分考えてほしいことです.症例報告の意義は,一義的には単眼的評価に耐えうるものでしょうが,その価値を高めるのは複眼的視点による必要かつ十分な考察だと思います.トンボの眼鏡...投稿者の眼,査読者の眼という観点から原稿の投稿を見つめ直してみるのはいかがでしょうか?

(石田 秀行)
2012年11月1日

 

日本消化器外科学会雑誌

 

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