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理事長挨拶 ―会員のみなさまへ―

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理事長挨拶 ー会員のみなさまへー

理事長 北川 雄光(慶應義塾大学医学部外科学)

 

 一般社団法人日本消化器外科学会は1968年に「消化器外科学の進歩と普及」を目的として発足し,昨年2018年に50周年を迎えました.第4代瀬戸泰之理事長のもと,先達の偉大なるご尽力によって切り拓かれた50年の歩みを振り返る記念事業が見事に執り行われ,本学会は次の50年,100周年に向けて新たな一歩を踏み出したところです.この大切な節目に,歴史と伝統ある本学会の理事長を仰せつかったことは大変光栄であると同時に,その重責に身の引き締まる思いです.

 本学会は会員約2万人を擁する外科系サブスペシアルテイー最大の学術団体です.急性腹症や腹部外傷をはじめとする救急疾患から,消化器癌の集学的治療,良性消化器疾患の機能温存・低侵襲治療まで医療現場の最前線において,最も広い疾患分野を支える消化器外科医は,我が国の外科領域全体の重要な担い手であると考えられます.本学会は,外科学・消化器外科学の学問的発展はもとより,若手外科医が誇りとやり甲斐を感じて生涯研鑽を積むことができるシステムを構築し,社会に向けて発信する使命を有しています.2015年から発足したJapanese skill education for young gastroenterological Surgeons(JESUS)は,消化器外科学の最前線で活躍するエキスパートたちが消化器外科の基本手技,自らの手を動かして患者さんの命に向き合う消化器外科医の醍醐味,喜びを研修医の皆様に伝える絶好の機会となっています.昨今,リスクを伴う医療を敬遠する風潮が若手医師たちにも蔓延する中で,消化器外科を志す研修医にさらなる勇気と希望を与えることで,着実に成果を挙げつつあります.また,JESUSには,女性研修医の皆様にも積極的に参加していただいており,次の世代には消化器外科領域においても適切な男女共同参画がより一層推進されるものと期待しております.
 本学会邦文誌は,学術誌としての高い質を確保しながら,若手消化器外科医の学問的基盤を養成する役割も果たしてきました.2017年に創刊された本学会公式英文誌Annals of Gastroenterological Surgery は本邦の優れた消化器外科学の知見を世界に向けて発信し,本学会の国際的プレゼンスを向上させる原動力として,今後の飛躍的な発展が期待されます.現在,着々と発展する本学会の国際化においても,このAGSurgの存在が極めて重要な役割を果たすものと考えます.
 新専門医制度が発足し,2021年には新制度における最初の外科専門医が誕生しますが,サブスペシアルテイー領域の今後については依然不透明な状況が続いています.本学会は,消化器外科医を目指す外科専門医が,適切な修練を経て消化器外科専門医を確実に取得できるよう新しい制度を2020年から発足し,その一環として公式テキスト「消化器外科医の心得」の編纂が進行中です.学ぶべき事項が明確化され,努力の末に取得した専門医資格がそれぞれの外科医のキャリアパスの中で確固たる意義を有する制度とすべく,今後もしっかりとした制度設計を行ってまいります.
 本学会が,日本外科学会,外科系関連諸学会とともに創設したNational Clinical Databaseは,現在独立した機構として運営され,外科系が全て連動した専門医制度の根幹を支えるのみならず,医療の質の向上,学術研究へも大きく貢献しております.今後は,消化器外科専門医が高度な技術を安全に提供することでもたらされる医療経済上の効果をNCDデータを用いて明らかにし,次代を担う消化器外科医に一定のインセンテイブを付与することが必要であると考えます.

 ここに述べた全ての施策は,申すまでもなくこれまで歴代の理事長,理事,評議員そして会員の皆様全てのご尽力ですでに着手され,着実な成果を挙げつつあります.
 次の50年,100年を担う消化器外科医の未来を明るく輝けるものとするために,延いては国民の健康と福祉に貢献するために,会員の皆様とともに全身全霊で努力精進してまいります.ご支援,ご指導のほど何卒よろしくお願い申し上げます.

(2019年8月)

 


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