学会誌
日本消化器外科学会 会誌編集委員会
「平成25(2013)年,年頭にあたって」
日本消化器外科学会 会誌編集委員会は,日本消化器外科学会雑誌について,従来からの「和文誌の最高峰を目指す」「若手の消化器外科医の登竜門」との一貫した基本姿勢のもと,編集方針そしてさまざまの状況に応じた変更点などを毎年メッセージとして発信してきた.完全電子化して2年が経過した本年も,通例どおり当委員会としての所感を述べたい.
本年は,長年本委員会の担当理事として多大なるご尽力をいただいた安藤暢敏先生の任期満了に伴い,新担当理事として渡邊昌彦先生のご指導の下に会務を遂行する新体制となった.
1.編集委員会の新組織について
渡邊昌彦理事のもと,任期が終了された編集委員の交代による新任の先生をお迎えし,昨年10月から新体制へと移行した(表1).通常の査読作業の質の向上とともに病理学,統計学の専門の立場からの見解を,積極的に依頼することにより,より質の高い査読が遂行されるようになった.さらにEnglish Language Editorの先生方の多大なるご尽力により,英文抄録および英文表記の内容と質が飛躍的に向上したことは,本学会誌の発展に大きく寄与していることとして,両先生のご貢献に心から謝意を表したい.
表1 会誌編集委員会
担当理事 | 渡邊 昌彦 | |||
委員長 | 桑野 博行 | |||
委 員 | 池内 浩基 | 石田 秀行 | 宇山 一朗 | 遠藤 格 |
太田 哲生 | 大辻 英吾 | 大坪 毅人 | 加藤 広行 | |
河原秀次郎 | 今野 弘之 | 杉山 保幸 | 瀬戸 泰之 | |
竹之下誠一 | 竹山 廣光 | 田中 淳一 | 寺島 雅典 | |
橋口陽二郎 | 橋本 雅司 | 正木 忠彦 | 松原 久裕 | |
山本 雅一 | 吉田 和弘 | |||
八尾 隆史(病理学) | 赤澤 宏平(統計学) | |||
English language editor | J. Patrick Barron | 小島多香子 | ||
編集幹事 | 浅尾 高行 | 持木 彫人 |
2.オンライン・ジャーナルについて
本学会誌は独立行政法人 科学技術振興機構が構築した科学技術情報発信・流通総合システム,Japan Science and Technology Information Aggregator, Electronic(J-STAGE )にDOIを付加したうえで収載している.CrossRefを経由し,海外のさまざまな電子ジャーナルサイト上の論文とリンクされている(図1).
図1 J-STAGE. JST Positioning. [cited 2012 December 5]. Available from: https://www.jstage.jst.go.jp/pub/html/AY04S030_en.html
3.Top publications in Japaneseについて
Google Scholarは2012年4月1日,最近の学術論文の認知度と影響度がわかる "Google Scholar Metrics" の提供を開始し,英文誌だけでなく日本語など主要な言語別に上位100誌を掲載した.
2012年4月現在,Top publications in Japanese(和文ジャーナル上位100誌)において,本学会誌は8位であった(医学系では1位).
4.二重投稿,重複投稿について
公開済みの論文との「二重投稿」および雑誌内(本学会誌内)での「重複投稿」のチェックを厳重に行うこととした.
以前の手書きの原稿執筆と異なり,近年はワード・プロセッサーによる論文作成は,飛躍的に作業を容易にさせた.一方,いわゆる「Copy & Paste(コピペ)」などにより,他人の文章を取り込むことも容易となり,最近,「他人の成果物をクレジット表示することなく取り込む(Wikipediaによる)いわゆる「剽窃(ひょうせつ)」が科学論文における倫理の点から大きな問題となっている.著者および指導者の方々には,今一度この点を十分に認識していただくことを切に願うものである.
たとえば「希少性」のある症例の報告であっても,それ以前の報告と考察が同じであるような「新知見」に乏しいものも散見される.ぜひ「独自」の考察,考え方に基づいた「独自」の文章による論文の作成をお願いしたい.
5.索引用語(キーワード)について
書誌情報データベースの利用者の利便性に鑑み,邦語のキーワードも併記することとした.また,できるかぎりタイトルに含まれていない具体的な語句を用いることを推奨したい.そして,基本的には略語は用いないこととした.
6.動画投稿への対応
図を説明する手段として,必要に応じて電子付録動画(supplementary material)を加えることができるようにした.
7.おわりに
本学会誌の採用率は低い状況で,いわゆる「狭き門」であることは現状であるが,委員会の基本姿勢としての,できるかぎり良質の論文を,本学会誌を通して世に出したいという考え方は編集委員一同の共通した思いであり,各委員は,いたずらに不採用とはせずに,可能なかぎり査読を通して論文価値を高めるべく意見を付している.すなわち採用率にこだわらず論文を「相対」ではなく「絶対」評価で丁寧に査読作業を遂行していることをぜひご理解いただきたい.
このような状況の中で,最近,「二重投稿の危惧があるので,事前に詳細な資料を付して,投稿の可否を伺う」著者や,不採用と判定された著者から査読者および委員会に謝辞が送られたことがあった.編集委員一同,多くの時間と精神を費やした努力が報われた思いを抱くとともに,特にこのような高潔な精神をもった投稿者ならびに指導者には心から敬意を表したい.
(文責:日本消化器外科学会会誌編集委員会委員長 桑野博行)
(2013年1月)