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理事長挨拶 ―会員のみなさまへ―

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理事長挨拶 ー会員のみなさまへー

理事長 調 憲(群馬大学大学院医学系研究科総合外科学講座肝胆膵外科学分野)

 

 一般社団法人日本消化器外科学会は1968年に「消化器外科学の進歩と普及」を目的として発足しました.本学会は先達の偉大なるご尽力によって切り拓かれた輝かしい歴史と伝統の上に,着実に発展を続けてきました.特にこの数年のコロナ禍の困難な状況にあっても,卓越したリーダーシップを発揮し見事な舵取りをいただいた第5代北川雄光理事長に感謝と敬意を表したいと思います.今回,この歴史と伝統ある本学会の理事長を仰せつかったことは大変光栄であると同時に,その重責に身の引き締まる思いです.

 本学会は19,000人を超える会員を擁する外科系サブスペシャルティ最大の学術団体です.急性腹症や腹部外傷をはじめとする救急疾患から,消化器癌の集学的治療,良性消化器疾患の機能温存・低侵襲治療まで医療現場の最前線において,最も広い疾患分野の診療を支える消化器外科医は,我が国の医療全体に重要な貢献を果たしてきました.本学会は,外科学・消化器外科学の学問的発展と共に,若手外科医が誇りとやり甲斐を感じて生涯研鑽を積むことができるシステムを構築するという使命を有しています.“ハイレベルな学術的知見の発信・国際的プレゼンスの向上”と”質の高い人材育成・地域医療への貢献”,この二つの方向性をバランスよくそして大きく発展させるため,努力をしてまいります.

 “ハイレベルな学術的知見の発信”・国際的プレゼンスの向上”については,第3代森正樹理事長の主導の下2017年に産声を上げた本学会公式英文誌Annals of Gastroenterological Surgery(AGSurg)が大きな役割を担っています. AGSurgは本邦の優れた消化器外科学の知見を世界に向けて発信し,本学会の国際的プレゼンスを向上させる原動力として,世界の一流誌に育てていく責務があると感じています.また,諸外国の学会とも交流を深め,絆を結ぶことで学会の国際化を進めてまいります.

 ”質の高い人材育成・地域医療への貢献”に関しては,初期研修医対象のJapanese skill education for young gastroenterological Surgeons(JESUS),U-40委員会,男女共同参画委員会,専門医制度が重要な役割を担っています.JESUSは,消化器外科学の最前線で活躍するエキスパートたちが消化器外科の基本手技,自らの手を動かして患者さんの命に向き合う消化器外科医の醍醐味,喜びを研修医の皆様に伝える絶好の機会となり,消化器外科を志す研修医にさらなる勇気と希望を与えることで,着実に成果を挙げつつあります.2020年に発足したU-40委員会は5,000名を超える40歳未満の若手会員による,若手会員のための活動です.アンケート調査に基づいてミッションを構築し,それを実現するためにZoomを用いたU-40 Clubというsmall discussionを地道に続け,若手の声を拾い上げています.さらに総会におけるU-40 Surgical seminarは手術技術や知識の学びの場として圧倒的な支持を集めています.第5代北川雄光理事長のリーダーシップの下,男女共同参画委員会が立ち上げられ,女性理事・評議員に関するポジティブ・アクションがすすんできました.そのようなタイミングの中,NCDデータを用いた研究により女性消化器外科医に手術機会が十分に与えられていない現状が明らかになりました.今や20%をこえる若手女性消化器外科医をはじめとした全ての女性消化器外科医に公正に手術の経験の機会が与えられ,多様な価値観にもとづくライフ・プランニングの中で,キャリアを積んでいただくために学会として今後も注視し,機会均等を目指すことを骨子とした“函館宣言”を採択しました.女性消化器外科医にも公正な修練機会が与えられるような環境の実現のために今後も努力を続けます.

 新専門医制度が発足し,2021年には新制度における最初の外科専門医が誕生しましたが,本学会では消化器外科医を目指す外科専門医が適切な修練を経て消化器外科専門医資格を確実に取得できるよう新しい制度を2020年から発足させました.その一環として公式テキスト「消化器外科専門医の心得」や「例題集」の発刊や継続的な学びのためのe-ラーニングの構築が行われてきました.所謂,消化器外科領域の“二階”部分を担う学会として,一般的な消化器外科診療から専門性の高い診療に至るまで様々な学びの機会と最新の情報を提供してまいります.

 第4代瀬戸泰之理事長の時に,本学会が日本外科学会,外科系関連諸学会とともに創設したNational Clinical Databaseは,現在独立した機構として運営され,外科系が全て連動した専門医制度の根幹を支えるのみならず,医療の質の向上,学術研究へも大きく貢献しております.未来の外科の在り方を考えるためのデータの根幹をなすものとして活用の幅を広げ,新たなエビデンスの構築に努めます.

 ここに述べた全ての施策は,申すまでもなくこれまで歴代の理事長,理事,評議員そして会員の皆様全てのご尽力ですでに着手され,着実な成果を挙げています.その上で,私は多様な背景を持つ会員一人ひとりの声なき声にも耳を傾け,思いに応える努力をいたします.次代を担う消化器外科医の未来を明るく輝けるものとし,国民の健康と福祉に貢献するために,会員の皆様とともに全身全霊で努力精進してまいります.ご支援,ご指導のほど何卒よろしくお願い申し上げます.

(2023年8月)

 


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